台所の棚に、抹茶の小さな缶とほうじ茶の袋が並んでいます。缶のふたを開けると、青い草のような香りがふっと立ちます。片方は茶筅で点て、片方は急須で淹れるお茶です。色も香りも離れていますが、どちらも同じ茶の木から生まれたのです。

この文章では、二つが分かれていく道すじを、作り方、味、一杯のカフェイン、淹れ方、ラテの順にたどっていきます。

覆いの下の葉と、二度目の火

缶の中の粉は、指につくほど細かく、深い緑をしています。抹茶は覆いの下で育てた葉を碾いたもので、ほうじ茶は仕上がった茶にもう一度火を入れたものなのです。

表示の決まりでは、抹茶は碾茶(てんちゃ)を茶臼などで細かな粉にしたお茶です。碾茶は摘む前の二、三週間ほど畑を覆って育て、蒸したあと揉まずに乾かします。ほうじ茶のほうは、煎茶や番茶を強い火で焙じて作ります。茎を多く集めて焙じれば、棒茶や茎ほうじ茶になります。

熱の入る場所も、ちがいます。抹茶の原料に入る熱は、摘んですぐの蒸しと乾かしだけです。ほうじ茶の火は、一度仕上がった茶に、あとからもう一度入るのです。原料を、覆いをした茶に限る決まりも、覆いのない茶に限る決まりもありません。

ほうじ茶を粉にしても、細かさが似ているだけで、決まりの上では「粉末茶」という別の名前です。資料で言えるのは、名前と工程の線引きまでです。ほうじ茶という名前と工程の関係は、ほうじ茶とは?茎茶・玄米茶との違いを工程で整理で整理してあります。作り方のつぎは、口にふくんだ味でしょう。

青海苔の香りと、香ばしい湯気

湯のみに注いだほうじ茶からは、焙じた葉の香りがやわらかく立ちのぼります。抹茶の味はうま味に、ほうじ茶の味は香ばしさに寄っているのです。

木陰の下草がやわらかく育つように、光をさえぎって育てた新芽は、渋みや苦みのもとを作りにくくなります。根で作られるアミノ酸が葉に移り、うま味の立った味になるのです。公の解説でも、碾茶は渋みが少なく、青海苔のような「覆い香」と強いうま味を持つとされます。

ほうじ茶は、渋みや苦みがほとんどなく、口あたりのよい香ばしさがあると説明されています。その香りの材料は、もとの葉でうま味や甘みを担っていた成分が、熱で変わったものです。そのうつりかわりは、アミノ酸と糖が、熱で香りに変わるまでで読めます。

どちらが濃いかは、同じものさしでは比べられません。資料で言えるのは、味の中心がどこにあるかまでです。味のつぎは、一杯にふくまれるカフェインでしょう。

茶碗の底まで飲む一杯

抹茶を飲みほすと、茶碗の底にうすい緑がのこります。一杯で比べると、カフェインは抹茶のほうが多いのです。

抹茶は溶かした粉をすべて飲み、ほうじ茶は葉から湯に出た分だけを飲みます。成分表の茶葉そのものの値でも、抹茶はほうじ茶の葉より多く出ています。ただ、ほうじ茶は葉を食べず、出た液を飲むお茶です。葉の値の低さが、そのまま一杯の低さになるわけではないのです。

器の大きさも出し方もちがうので、二つの数字を割った倍率には意味がありません。粉にしたほうじ茶を溶かして飲むと、葉ごと飲むことになります。資料ごとに数字がちがうわけは、ほうじ茶のカフェイン量が資料ごとに違う理由に続きがあります。

濃く淹れれば、数字も動きます。資料で言えるのは、決まった条件で淹れた一杯までです。夜や子どもに出すときの考え方は、ほうじ茶のカフェイン目安の総覧にまとめてあります。

煎茶や紅茶とならべた数字は、ほうじ茶のカフェイン量は?煎茶・番茶・紅茶と条件をそろえて比較で比べています。数字のつぎは、やかんの湯が鳴る音でしょう。

冷ました湯と、沸きたての湯

やかんの湯が鳴りはじめると、台所の空気が少し湿ります。抹茶は冷ました湯で点て、ほうじ茶は沸きたての湯で短く淹れるのです。

茶の研究所の案内でも、抹茶はまず茶こしでふるってダマをなくします。温めた茶碗に粉を入れ、一度沸かして冷ました湯を少し注いで、先に溶きます。残りの湯を足して、手首を前後に動かしながら茶筅で混ぜるのです。泡が細かいほど、口あたりはなめらかになります。

ほうじ茶は、熱湯で三十秒ほどが標準です。火の香りを楽しむお茶だから熱湯を使う、という説明もあります。

茶杓の代わりはティースプーンに軽く一杯、茶碗の代わりはカフェオレボウルで足ります。湯の温度は、夏はやや低め、冬はやや高めにします。資料で言えるのは、標準の形までです。

淹れ方の案内がどこまで広がっているかは、ほうじ茶の「90℃・30秒」はどこから?でたどれます。湯のつぎは、小鍋であたためる牛乳でしょう。

小鍋の牛乳と、茶色の粉

小鍋の牛乳があたたまり、ふちに細かな泡が寄ってきます。ほうじ茶ラテには、濃く淹れた液か、ほうじ茶の粉末を使うのです。

茶の店が公開しているレシピでも、粉末を砂糖と湯で溶いてシロップにし、温めた牛乳と合わせています。公開のレシピを並べると、一杯に占める牛乳は二割から八割を超えるものまで開いています。比率の決め方は、牛乳の比率を、先に決めるで扱っています。

粉末を買うときは、無糖の製菓用か、糖を加えたミックスかを先に確かめます。同じ量で入れ替えると、茶だけでなく糖もいっしょに替わるからです。選び方は、お菓子やラテに使う、ほうじ茶の粉末を選ぶで確かめられます。

資料で言えるのは、作り方の形までです。店のほうじ茶ラテを先に味わうなら、カフェMAPで出している店を探せます。ラテのあとは、棚の前でどちらを手に取るかでしょう。

棚の前で、どちらを手に取るか

棚の前で、緑の缶と茶色の袋を見くらべます。選ぶ手がかりは、味の中心と、飲むものと、かける時間の三つなのです。

うま味を楽しむなら抹茶、香ばしさを楽しむならほうじ茶です。粉ごと飲むか、葉から出た液を飲むかでも分かれます。茶筅で一碗を点てる時間をとるか、急須と熱湯で手早く淹れるかも、ひとつの目安になるでしょう。

カフェインが気になる日は、数字の大小より先に、その条件を見ます。抹茶は使った粉の量がそのまま一杯の量になり、ほうじ茶は葉と湯の比と時間で動くのです。資料で言えるのは選ぶための軸までで、どちらがよいかは決められません。数字と出典は、このあとにまとめて置いておきます。

数字でくわしく

名称と定義
日本茶業中央会の「緑茶の表示基準」は、抹茶を「碾茶を茶臼等で微粉末状に製造したもの」と定めています。ほうじ茶の定義は「煎茶や番茶などを強い火で焙って製造したもの」です。茶を粉砕機などで粉にしたものは、「粉末茶」という別の名前です。碾茶を作るときに茎や葉脈も取り除くことは、農林水産省の解説にあります。
覆う期間
表示基準では、碾茶が2〜3週間ほど、玉露が20日程度と別に書かれています。覆いには、よしずやコモ、寒冷紗などを使います。光をさえぎると渋みや苦みの成分が作られにくくなり、根で作られるテアニンが葉に移ることは、農林水産省の玉露の説明によります。
味の説明
農林水産省の解説によります。同じ解説の別のページは、ほうじ茶を「あっさりしたのどごし」とも表しています。
抹茶のカフェイン
カフェインの値は、日本食品標準成分表2020年版(八訂)によります。抹茶は粉末100gあたり3.2gで、粉1.5gを湯70mLに溶かした一碗は48mgです。粉約2gで点てると、約64mgになります〔計算値〕。
ほうじ茶のカフェイン
ほうじ茶の20mgは、茶葉15gに90℃の湯650mLを注ぎ、0.5分(30秒)置いた液100mLあたりの値です。湯100mLに茶葉約2.3gの濃さにあたります〔計算値〕。150mLの湯のみで飲むと、約30mgです〔計算値〕。
粉のほうじ茶
ほうじ茶の茶葉は、100gあたり1.5gです。粉末の値は成分表にないため、茶葉の値で見積もると、粉2gで約30mgです〔計算値・商品によって違います〕。
点て方
抹茶の手順は、京都府茶業研究所の案内によります。温めた茶碗に茶杓2杯(約2g)を入れ、一度沸かして70〜80℃に冷ました湯を70mL用意します。
熱湯と30秒
ほうじ茶の熱湯・30秒は、日本茶業中央会のサイトにある献立集が、1973年の研究会の報告を出典として書いているものです。熱湯の理由は農林水産省のサイトの「おいしいお茶の入れ方」にあり、番茶や焙じ茶を、味わうより火香・焙じ香を楽しむ茶としています。
ラテ
ラテのシロップの作り方は、京都のKurasuのレシピによります。公開されているレシピでは、一杯に占める牛乳の割合が2割から8割超まで開いています。