乾いた茶葉を弱い火にかけても、しばらくは何も起きません。それから急に、部屋の匂いが変わります。青い匂いが引いて、香ばしい匂いが立ちのぼるのです。袋を開けたときとは、別の匂いです。
この文章では、香ばしさの材料、生まれるもの、減るもの、温度での入れかわりを、順に見ていきます。
香ばしさは、葉の中にあった
木べらで茶葉を返すたびに、香ばしさが少しずつ濃くなっていきます。その材料は、もとの茶葉の中にあるのです。
うま味と甘みを担っていた成分が、熱で別のものに変わります。外から何かを足したわけではないのです。資料で言えるのは、材料の出どころまでです。熱の上で何が生まれるのかが、つぎの話でしょう。
新しく生まれた、たくさんの香り
焙じたての茶葉に顔を寄せると、香りが幾重にも重なって届きます。焙じたお茶には、もとの葉になかった成分が八十をこえて生まれているのです。
糖とアミノ酸が熱で結びついてできる仲間が、香りのおもな部分をしめます。うま味のもとと糖からも、新しい成分が生まれていました。研究が焙じた温度と時間は、温度を確かめた節の表にまとめてあります。
資料で言えるのは、生まれた成分の顔ぶれまでです。生まれる香りのかげで、減っていくものもあるのでしょう。
