ほうじ茶は、茶葉に火を入れて作ります。では、火を入れると茶葉の中で何が起きているのか。ここでは研究の記述に書かれている範囲だけを読みます。数字や成分名を足さずに、分かっていることをそのまま置きます。香りの正体を、少しずつ言葉にしていきます。読み終えたら、次は道具の話へ進めます。
加熱で、香りのもとが生まれる
棒茶の焙煎を扱った研究は、加熱によってアミノ酸と糖から揮発性の成分が生成すると説明しています。もともと茶葉にあった成分が、熱を受けて別の物質に変わる。香りのもとが、そこで新しく作られるという説明です。熱を加える前と後で、中身が入れ替わるということです。足したのではなく、変わった。
つまり焙煎は、茶葉に香りを足す作業ではありません。茶葉が持っている材料から、香りを起こす作業です。だから同じ茶葉でも、火の入れ方が変われば出てくるものが変わります。ここまでが、この研究の説明の範囲です。火の当て方が、そのまま結果に出てくる作業です。焙煎が面白いのは、たぶんそこです。
増えるのは、香ばしさだけではない
農研機構は、茶の仕上げ加工を対象にした試験で、焙煎による香りの質的な変化を見るためにアロマプロファイルを作っています。影響が強くなったとされるのは、甘い、果実様、グリーン、香ばしい、スパイシー、土臭い、花様、肉様の匂いをもつ成分です。匂いの種類が言葉で並べられているところが読みどころです。専門的な指標ではなく、感じ方の分類です。
並んでいる言葉を見ると、香ばしさだけではありません。甘い香り、花のような香り、果実のような香りも含まれています。同機構は、焙煎により特有の香ばしさとふくよかさが増し、青臭みが緩和されるとも書いています。焙煎が、香りの引き出しを増やす作業に見えてきます。ここは覚えておきたい点です。
ただし、すべての香気成分が焙煎で一律に増えるとは書かれていません。同機構は、茶の焙煎は消費地によって強弱があり、香ばしさが異なるとも述べています。プロファイルという言葉が示しているのは、量の多少ではなく、香りの構成が変わることです。どれが強くなるかは、条件によって変わるということです。量の話と、構成の話は別です。
ここから先は、書かれていない
この二つの記述は、それぞれの試験で示された条件の範囲の結果であり、試験条件の外や、市販ほうじ茶全体・全商品の香気変化にそのまま当てはめることはできません。分かるのは、熱で香りのもとが作られ、香りの構成が変わるということまでです。線を引いておけば、あとで資料が増えたときに足していけます。今は、ここまでにします。
香りの成分が増えることと、体に良いこととは別の話です。この記事では、香りが生まれる仕組みの入り口までを扱います。その先を知りたいときは、引用元の研究をそのまま読むのが早いです。香りの話を、体の話にすり替えないようにしておきます。読む楽しみは、引用の中にも十分あります。
