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「焙じる」と「火入れ」は、同じ火でも別の工程

第5章・公開 3節/全5節

焙じた茶葉の大きな寄りと、立ち上る香りを象徴する金色の線の挿絵

「焙じる」と「火入れ」は、同じ火でも別の工程です。その境目を温度と時間で見ます。

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名前で分かれているお茶を、工程で並べ直す

ほうじ茶とは、煎茶や番茶などを焙じて作る緑茶の一種です。農林水産省の説明では、ほうじ茶は作り方、茎茶は使う部位、玄米茶は合わせる材料の名前。袋の名前は、この三つの層で読めます。

焙じる茶葉と、茎茶・玄米茶の材料を並べたイラスト

「ほうじ茶」と「茎茶」は、どちらか一つを選ぶ名前ではありません。茎を焙じれば、一つのお茶が両方に当てはまります。お茶の名前には、作り方を表すものと、使う部分を表すものが混ざっているからです。

ほうじ茶、茎茶、玄米茶を、原料から順にたどってみます。違いが分かると、初めて見る商品でも、名前だけで中身を少し想像できるようになります。

ほうじ茶とは何か。煎茶や番茶を焙じた緑茶の一種

ほうじ茶とは、煎茶や番茶などを焙じて作る緑茶の一種です。茶葉の見た目は変わりますが、別の種類の茶になるわけではありません。名前が指しているのは、緑茶を作ったあとに焙煎という工程を足したこと、その一点です。

三つの名前は、それぞれ別のことを指しています。ほうじ茶は作り方(焙じること)、茎茶は使う部位(茎)、玄米茶は合わせる材料(炒った米)です。層が違うので、茎を焙じたお茶は「ほうじ茶」でも「茎茶」でもあり、どちらか一方を選ぶ関係にはなりません。袋は、何のお茶か、葉か茎か、焙じてあるか別の材料を合わせてあるか、の順に読めます。

農林水産省は、ほうじ茶を煎茶や番茶などを焙じた緑茶の一種として紹介しています。緑茶を作り、そのお茶に焙煎という工程を加える。茶葉の見た目が変わっても、緑茶から作られたお茶です。

緑茶を作る早い段階で茶葉を加熱するのは、酵素の働きを止めるためです。ほうじ茶を作る焙煎とは、工程の位置が違います。「熱を加えてある」というだけでは、どの工程の話なのかは分かりません。

茎茶は作り方ではなく、使う部位の名前

ここで使う定義は、農林水産省が公開している日本茶の紹介ページの記述です。このページは、それぞれの名前がどの工程や部位を指しているかを説明しています。商品ごとの焙煎の強さや原料の産地までは、ここからは分かりません。

農林水産省の説明では、茎茶は玉露や煎茶の茎を集めたお茶です。「ほうじ茶」が焙じる工程を指すのに対して、「茎茶」は使う部位を指します。

この二つを重ねると、「茎を使っているか」と「焙じているか」は別々に尋ねられます。茎茶という名前だけで焙煎済みと決めず、商品説明まで読む理由もここにあります。葉を思い浮かべてほうじ茶を買ったら、中から細い茎が出てきても不思議ではありません。

残りの二節では、玄米茶の「炒る」がほうじ茶の焙じることとどう違うのか、そして一袋を「何のお茶か・葉か茎か・焙じてあるか」の三つの問いで読む順番が分かります。

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アミノ酸と糖が、熱で香りに変わるまで

ほうじ茶の香りは、焙煎の熱でアミノ酸と糖から新しく生まれます。棒茶を180℃から220℃で焙じた石川県工業試験場の研究では、香りのもとになるピラジン類が増える一方、カテキンとアミノ酸は急速に減りました。

焙じた茶葉の大きな寄りと、立ち上る香りを象徴する金色の線の挿絵

湯のみを近づけると、ほうじ茶の香りが立ちます。ふだんは「香ばしい」のひと言で足りてしまう香りですが、その多くは、茶葉に火を入れたときに新しく生まれたものです。

石川県の試験場と大学が棒茶を180℃から220℃で焙じた研究があり、農研機構には焙煎した茶の香りを成分ごとに分けた報告があります。二つを並べて読むと、焙煎中に茶葉で起きる変化が、少しずつ具体的になっていきます。

ほうじ茶の焙煎では、茶葉の中で何が起きているのか

ほうじ茶を焙じると、茶葉の中のアミノ酸と糖が熱で反応し、もとの緑茶にはなかった香りが新しく生まれます。何かを足す工程ではありません。同じ熱で、緑茶の味をつくっていたカテキンとアミノ酸は減っていきます。

熱の中で起きているのは三つです。①アミノ酸と還元糖からピラジン類が生まれる反応はメイラード反応と呼ばれ、温度が高いほど進みます。②糖と結びついていたゲラニオールやリナロールは、加熱で結びつきがほどけて増えます。③その裏でカテキンとアミノ酸は急速に減り、焙煎は香りを足すと同時に、味の成分が抜けていく工程でもあります。

日本茶インストラクター協会の基礎解説では、焙じるという言葉を、鍋などに食品を入れて水分がなくなるまで熱すること、またあぶり焦がすことと説明しています。ほうじ茶は煎茶や番茶などを高熱で焙じて作られ、特別な材料を使っているわけではありません。

農林水産省も、ほうじ茶を煎茶・番茶を強火で炒ったお茶とし、独特の香ばしい香りと、あっさりしたのどごしを特徴に挙げています。何かを足す工程ではなく、すでに茶葉の中にあるものを熱で変える工程だということになります。

アミノ酸と糖が熱で香りに変わる

この記事の数字は、二つの報告によります。一つは石川県工業試験場と石川県立大学による棒茶の研究で、やぶきたの一番茶の茎をドラム式焙煎機で焙じた結果です。結論も「180℃から220℃の範囲で」と断って書かれています。もう一つは農研機構の報告で、茶の表面温度が100℃、115℃、130℃に達したところで取り出した三点の試料を比べたものです。どちらも特定の原料と条件での結果で、すべてのほうじ茶に当てはめられる数値ではありません。

棒茶の焙煎を扱った研究は、焙煎が緑茶の中のアミノ酸と糖から揮発性の成分を生み出すとしています。アミノ酸と還元糖からピラジン類が生まれる反応はメイラード反応と呼ばれ、その速さは温度に左右されるため、焙煎温度が上がるほど反応は進みます。

焙じた茶には百を超える揮発性成分が含まれ、その中でもピラジン類が香りを左右する主要な成分だと、この研究は先行研究を引きながら述べています。

生まれる香りはピラジン類だけではありません。ゲラニオールやリナロールは、緑茶の中では糖と結びついた形で存在し、加熱でその結びつきがほどけると増えると報告されています。香ばしさだけでなく、花のような香りも焙煎の中で増えていきます。

この先の五節では、180℃・200℃・220℃で香りがどう変わったか、増えるあいだに減っていくカテキンとアミノ酸、「香ばしい」を八つの言葉に分ける見方、火入れと焙じるの違いまで読めます。

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烏龍茶も紅茶も、乾いたあとにもう一度火が入る

台湾の改良場が紹介する凍頂烏龍茶では、乾燥のあとにもう一度、焙煎(烘焙)が置かれます。目的は香りだけでなく、脱水、貯蔵期限、雑味の修正も含みます。清香型と焙香型の読み方まで見ます。

浅く焙じた緑褐色と深く焙じた濃い褐色の、球状に丸まった烏龍茶の茶葉を二つの白い小皿に分け、隣に竹編みの焙籠を置いたイラスト。

緑茶、烏龍茶、紅茶を酸化の程度で並べると、お茶の分類は整理できます。けれど、それだけでは同じ烏龍茶にある香りの違いまで説明しきれません。農林水産省も、烏龍茶には半発酵と焙煎の程度による多様な味や香りがあると紹介しています。酸化とは別に、仕上げの火を入れる軸を加えて見てみます。

烏龍茶は、なぜ乾燥のあとにも焙煎するのか

台湾の改良場が紹介する凍頂烏龍茶では、乾燥を終えたあとにもう一度、焙煎(烘焙)の工程が置かれます。目的は香りを付けることだけではありません。水分をもう一度取り除き、貯蔵期限を延ばし、初製茶の青臭さや雑味を直す仕事も、同じ工程に含まれています。火を入れない清香型もあるので、茶名だけでは決まりません。

資料が書いているのは三つです。①台湾の資料では、乾燥と焙煎が別の工程名として並んでいます。②焙煎の働きとして挙げられているのは、脱水、貯蔵期限、雑味の修正、そしてその茶らしい焙煎の香りと風味です。③球形の烏龍茶は、酸化の分類とは別に、焙煎に関わる清香型と焙香型でも整理されます。

台湾の農業部茶及飲料作物改良場が紹介する凍頂烏龍茶の工程は、日光萎凋、室内萎凋と攪拌、殺青、初乾、団揉、乾燥、そして焙煎へ続きます。この例では、乾燥と焙煎が別の工程名として並んでいます。

伊藤園の烏龍茶の製造解説では、乾燥の段階でじっくり乾かし、多少の火香を付けると説明されています。熱を加える工程は、単に水分をなくす作業とだけ読めません。どの段階で、どんな目的で熱を入れるのかを見る必要があります。

焙煎の目的は、香りだけではない

ここで引くのは、台湾の農業部茶及飲料作物改良場の解説と、伊藤園の製造工程の説明、それに専門店HOJOの商品解説です。三つとも、対象とする茶と工程を決めたうえで、焙煎がどこに置かれ何をする工程かを書いています。温度や時間の数値は示されていないので、日本のほうじ茶の焙煎条件と同じ土俵では比べられません。

台湾の改良場の資料は、焙煎の働きとして、水分をもう一度取り除くこと、貯蔵期限を延ばすこと、初製茶の青臭さや雑味を直すこと、その茶らしい焙煎の香りと風味を与えることを挙げています。完成へ向けて状態を整える仕事と、香味を作る仕事が一緒に説明されています。

そのため、「焙煎したお茶」と書かれていても、強い焦げ色や焙じ香だけを目的にしたとは限りません。どんな原料を、どんな状態から仕上げる工程なのかまで読むと、火を入れる理由の幅が見えてきます。

残りの三節では、清香型と焙香型という分類の使いどころ(火を入れない清香型がある例を含む)、ほうじ茶と比べるときに焙煎の前を見る理由、袋の「烘焙」の読み方を読めます。

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