お茶は、焙煎でもっとおもしろい。

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袋の「浅煎り・深煎り」から、中身を読む

第6章・公開 2節/全5節

明るい黄金色から濃い茶色まで、色合いの異なる茶葉を三つの浅い器に並べた挿絵

袋に書かれた「浅煎り・深煎り」から、中身をどこまで読めるのかを整理します。

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「浅煎り・深煎り」に、業界共通の定義はない

浅煎り・中煎り・深煎りは、日本茶業中央会の表示基準にある名称ではありません。基準が定めるのは「ほうじ茶」など17種の名称までで、焙煎度は各店が自分の言葉で書いています。

明るい黄金色から濃い茶色まで、色合いの異なる茶葉を三つの浅い器に並べた挿絵

お茶の袋を裏返すと、小さな表が印刷されています。名称、原材料名、内容量、賞味期限。浅煎りや深煎りという言葉は、たいていこの表の外側、商品名や説明文のほうに置かれています。

この置き場所の違いには理由があります。袋に何を書くかを決めている基準と、店が自分の言葉で伝えている説明とは、別の層にあるからです。四つの茶商の書き方を並べ、公的な資料とコーヒーの区分もはさんで読んでいきます。

ほうじ茶の浅煎り・中煎り・深煎りは、誰が決めているのか

浅煎り、中煎り、深煎りは、業界団体の表示基準に定められた名称ではありません。日本茶業中央会の緑茶の表示基準が決めているのは「ほうじ茶」などの名称までで、焙煎度は各店が自分の言葉で書いています。基準になる温度も、どこにも書かれていません。

分かれ目は三つあります。①日本茶業中央会の表示基準は容器包装に書く名称を17種で定めていて、浅煎り・中煎り・深煎りは独立した名称に入っていません。②同じ「浅煎り」でも比べている相手はその店の別の商品なので、店をまたぐと基準はそろいません。③焙煎度の名前が、葉か茎かという原料の違いと一緒に付いていることもあります。

日本茶業中央会の緑茶の表示基準は、容器包装に書く名称を表1で定めていて、「名称は、表1に定めるところによる」としています。表1に並ぶのは煎茶、玉露、番茶又は川柳、茎茶又は棒茶、玄米茶など17種です。ほうじ茶もその一つで、定義は「煎茶や番茶などを強い火で焙って製造したもの」です。

この表示基準では、浅煎り・中煎り・深煎りは独立した名称として定められていません。名称の末尾に括弧書きで俗称や形態を示すことはでき、「名称 蒸し製玉緑茶(グリ茶)」が例に挙がっています。

商品の焙煎度は、各店の説明と合わせて読めます。以下では、その説明が店ごとにどう違うのかを見ていきます。

同じ「浅煎り」でも、店ごとに違う

以下に並ぶのは、流芳園、森乃園、舞妓の茶本舗の商品説明と、丸安茶業の発売プレスリリースです。四社とも焙煎の強さを自分の言葉で書いていて、温度の数値はどの説明にも出てきません。

京都・宇治田原の流芳園は、浅煎りで重要なのは原料の目利きで、できる限り低温で香ばしい香りをつくり出すことで浅煎りならではの旨味が生まれるとしています。深煎りには、カフェインや遊離アミノ酸、タンニン酸が少ない茶葉を選び、しっかりと高熱でローストします。

大正3年創業の自家焙煎ほうじ茶専門店、森乃園は、浅煎りを、緑茶ならではの旨味・苦味・渋味を残しながら弱火でゆっくり焙煎したものとしています。深煎りは一般的なほうじ茶の焙煎方法で、高温でしっかり焙煎すると渋味や苦味が抜け、さっぱりと飲みやすくなると説明しています。

京都の舞妓の茶本舗は、表記そのものが「浅炒り」です。浅炒りほうじ茶は、じっくり焙煎して色も濃い「香り風味」に比べ、弱火でゆっくり浅めに焙煎したものです。浅く炒ることで、かりがね(茎茶)の香りも味わえるとしています。

浅い側に共通するのは、弱火、低温、原料の香りを残すという言い方です。ただし基準になる温度はどこにも書かれていません。同じ言葉でも、比べている相手はその店の別の商品です。

この先の五節では、焙煎度の名前が原料(茎か葉か)と一緒に付く例、農林水産省の資料が書く浅い側と深い側の向き、研究が焙煎度をどう線引きしたか、コーヒーの「深煎り」との違いまで読めます。

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更新 2026年9月22日この節だけのページ

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袋の言葉から、飲む前に分かること

丸久小山園は浅煎りを茶本来の清らかな風味、深煎りを芳醇な香ばしさと力強いロースト感と説明しています。ただし「浅い」「深い」は店をまたぐと基準がそろわず、同じつくり手の二商品から読みます。

焙煎器と色の異なる茶葉で、焙煎の違いを表したイラスト

「浅煎りが好きです」と言っても、別の店で同じ名前のお茶を選べば同じ味になるとは限りません。浅い、深いという言葉は、その店の中で商品を見分ける手がかりでもあります。

焙煎の言葉を読むときは、まず同じつくり手の二つを比べ、次に別の店へ視野を広げてみます。順番を変えるだけで、説明から受け取れる情報が変わります。

ほうじ茶の浅煎り・深煎りの表記は、どこまで比べられるのか

丸久小山園は、浅く仕上げる銘柄を茶本来の清らかな風味、深めに仕上げる銘柄を芳醇な香ばしさと力強いロースト感として説明しています。ただし「浅い」「深い」は、まずその店の中で商品を見分けるための言葉です。店をまたぐと共通の温度表も時間表もないので、読む順番を同じつくり手の二商品からにすると、風味の説明まで取り出せます。

読み取れることは三つです。①丸久小山園の説明では、浅煎りは原料の清らかな風味を残す方向、深煎りは芳醇な香ばしさと力強いロースト感を出す方向に仕上げられます。②店をまたいだ「浅煎り」どうしは、同じ条件で作られたとは言えません。③焙煎の表記、原料、つくり手が書く風味の説明を一組にして持ち帰ると、次に選ぶときに使えます。

丸久小山園は、「御所かおり」を浅く仕上げる商品の例、「小倉かおり」を深めに仕上げる商品の例として紹介しています。この二つなら、少なくとも同じつくり手が使う言葉の中で、仕上げ方の違いを読めます。

同社は浅く仕上げる銘柄では茶本来の清らかな風味を、深めに仕上げる銘柄では芳醇な香ばしさと力強いロースト感を紹介しています。「浅い・深い」という程度の言葉に、残したい風味や立ち上がる香りの言葉が重なります。このように具体的な表現まで読むと、どちらを飲んでみたいかを想像しやすくなります。

店をまたぐと「浅煎り」の基準はそろわない

ここで比べるのは、丸久小山園、丸八製茶場、一保堂茶舗の三社が自社で公開している商品説明です。三社とも仕上がりの印象を自分の言葉で書いていて、温度や時間の数値はどこにも出てきません。

丸八製茶場の「献上加賀棒茶」は浅い焙煎、一保堂茶舗の「くきほうじ茶」は深い焙煎と案内されています。いずれも仕上がりを伝える説明ですが、同じ温度表や時間表に沿った表示ではありません。

そのため「浅煎り」という一語だけを切り取り、別の会社の浅煎りと同じ条件だったと考えることはできません。商品名、使う原料、風味の説明までを一組にして読むほうが、選択に役立ちます。

残りの二節では、焙煎で香りへの関わりが強まる成分と弱まる成分を示した農研機構の研究の読み方と、一袋から焙煎の表記・原料・風味の説明の三つを持ち帰る方法を読めます。

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