お茶の袋を裏返すと、小さな表が印刷されています。名称、原材料名、内容量、賞味期限。浅煎りや深煎りという言葉は、たいていこの表の外側、商品名や説明文のほうに置かれています。
この置き場所の違いには理由があります。袋に何を書くかを決めている基準と、店が自分の言葉で伝えている説明とは、別の層にあるからです。四つの茶商の書き方を並べ、公的な資料とコーヒーの区分もはさんで読んでいきます。
ほうじ茶の浅煎り・中煎り・深煎りは、誰が決めているのか
浅煎り、中煎り、深煎りは、業界団体の表示基準に定められた名称ではありません。日本茶業中央会の緑茶の表示基準が決めているのは「ほうじ茶」などの名称までで、焙煎度は各店が自分の言葉で書いています。基準になる温度も、どこにも書かれていません。
分かれ目は三つあります。①日本茶業中央会の表示基準は容器包装に書く名称を17種で定めていて、浅煎り・中煎り・深煎りは独立した名称に入っていません。②同じ「浅煎り」でも比べている相手はその店の別の商品なので、店をまたぐと基準はそろいません。③焙煎度の名前が、葉か茎かという原料の違いと一緒に付いていることもあります。
日本茶業中央会の緑茶の表示基準は、容器包装に書く名称を表1で定めていて、「名称は、表1に定めるところによる」としています。表1に並ぶのは煎茶、玉露、番茶又は川柳、茎茶又は棒茶、玄米茶など17種です。ほうじ茶もその一つで、定義は「煎茶や番茶などを強い火で焙って製造したもの」です。
この表示基準では、浅煎り・中煎り・深煎りは独立した名称として定められていません。名称の末尾に括弧書きで俗称や形態を示すことはでき、「名称 蒸し製玉緑茶(グリ茶)」が例に挙がっています。
商品の焙煎度は、各店の説明と合わせて読めます。以下では、その説明が店ごとにどう違うのかを見ていきます。
同じ「浅煎り」でも、店ごとに違う
以下に並ぶのは、流芳園、森乃園、舞妓の茶本舗の商品説明と、丸安茶業の発売プレスリリースです。四社とも焙煎の強さを自分の言葉で書いていて、温度の数値はどの説明にも出てきません。
京都・宇治田原の流芳園は、浅煎りで重要なのは原料の目利きで、できる限り低温で香ばしい香りをつくり出すことで浅煎りならではの旨味が生まれるとしています。深煎りには、カフェインや遊離アミノ酸、タンニン酸が少ない茶葉を選び、しっかりと高熱でローストします。
大正3年創業の自家焙煎ほうじ茶専門店、森乃園は、浅煎りを、緑茶ならではの旨味・苦味・渋味を残しながら弱火でゆっくり焙煎したものとしています。深煎りは一般的なほうじ茶の焙煎方法で、高温でしっかり焙煎すると渋味や苦味が抜け、さっぱりと飲みやすくなると説明しています。
京都の舞妓の茶本舗は、表記そのものが「浅炒り」です。浅炒りほうじ茶は、じっくり焙煎して色も濃い「香り風味」に比べ、弱火でゆっくり浅めに焙煎したものです。浅く炒ることで、かりがね(茎茶)の香りも味わえるとしています。
浅い側に共通するのは、弱火、低温、原料の香りを残すという言い方です。ただし基準になる温度はどこにも書かれていません。同じ言葉でも、比べている相手はその店の別の商品です。

