お茶は、焙煎でもっとおもしろい。

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加賀棒茶は、なぜ茎なのか

第7章・公開 3節/全4節

竹の茶さじに載せた細い茎と、その隣に広げた幅のある茶葉を対比した挿絵

加賀棒茶が茎から作られる理由を、葉と茎の中身の違いから見ていきます。

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葉と茎で、中身がどう違うか

ほうじ茶の原料は、葉だけ、茎だけ、両方を合わせたものがあります。農林水産省が紹介する加賀棒茶では、茎を分けるのは焙煎の前、荒茶を作ったあとです。丸八製茶場の商品例と石川県の研究で違いを確かめます。

葉、茎、葉と茎を組み合わせたほうじ茶を三つの皿で比べるイラスト

ほうじ茶の袋を開けると、葉が目立つものも、細い茎が目立つものもあります。同じ「ほうじ茶」という棚に並んでいても、焙じる前に選んでいる材料は同じではありません。

原料の違いを、商品の実例と研究の見方からたどります。茎と葉のどちらが上かを決めるよりも、何を比べているのかを見つける読み方です。

ほうじ茶の原料は葉か茎か。同じ棚の商品でも中身は違う

ほうじ茶の原料は一つではありません。葉を焙じたもの、茎を焙じたもの、葉と茎を合わせたものが、同じ「ほうじ茶」の棚に並びます。しかも農林水産省が紹介する加賀棒茶では、茎と葉が分かれるのは焙煎の前、荒茶を作ったあとの選別です。

押さえるのは三点です。①同じつくり手でも、商品ごとに葉と茎を使い分けています。②農林水産省が紹介する加賀棒茶では、茎は焙じてから分かれるのではなく、蒸し・揉み・乾燥で荒茶を作ったあとに選別されます。③石川県工業試験場の比較では、同じ条件で焙煎しても、茎と葉では香り成分の構成に違いが見られました。

丸八製茶場の「加賀ほうじ茶」は葉を、「献上加賀棒茶」は茎を使っています。つくり手が同じだから原料も同じ、というわけではありません。まず商品名を並べ、次にそれぞれの材料を確認すると、比較の出発点が変わります。

飲んだときに違いを感じても、それを焙煎の強弱だけの差とは決められません。材料を替えて作られた商品どうしだからです。「どのくらい焙じたか」の前に、「何を焙じたか」という問いがあります。

加賀棒茶では、茎は焙じる前に選び分けられる

以下で引くのは、丸八製茶場と丸久小山園の商品説明、農林水産省が紹介する加賀棒茶の製法、それに石川県工業試験場の共同研究と1999年の茶香気の報文です。研究は試料と条件をそろえた比較で、市販品では原料に加えて作り方も変わります。葉と茎のどちらが上かを決める資料ではありません。

農林水産省が紹介する加賀棒茶の製法では、蒸す、揉む、乾燥する工程で荒茶を作り、そこから茎の部分を選別して焙煎します。火を入れてから葉と茎が分かれるのではなく、原料を選び分けてから焙じる順番です。

原料に混じる茎を集めて使う工程です。棒茶を飲むとき、焙煎より手前にある選別までたどると、茎を使うという選択が具体的になります。

残りの三節では、葉と茎を合わせた「御所かおり」のような商品の読み方、同じ条件で焙じても香りがそろわない理由、原料ごとに変わる火の条件を読めます。

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茎が浅い焙煎で使われる理由

日本茶業中央会の表示基準では、茎茶・棒茶は荒茶の仕上げ工程で選別された茎を多く含む茶です。焙じる前からアミノ酸量が葉の約1.5倍あり、すすめられてきた焙じ条件も違います。

竹の茶さじに載せた細い茎と、その隣に広げた幅のある茶葉を対比した挿絵

棒茶の細い茎と、葉のほうじ茶。急須の中をのぞけば形の違いはすぐに分かります。けれど、この二つが分かれたのは焙煎の前、もっと手前の工程でした。

茎茶や棒茶という言葉の定義、焙じる前からある成分の差、そして茎と葉で違っていた火の条件。表示の基準と産地の資料、二つの報告を順に読んでいきます。

茎茶・棒茶とは何か。葉のほうじ茶と、どこが違うのか

茎茶・棒茶は、荒茶の仕上げ工程で選別された茶の茎や葉柄を多く含む茶です。茎だけ、ではありません。葉のほうじ茶と分かれるのは焙煎の前で、火を入れる手前から中身が違っています。

数字で確かめられているのは三つです。①石川県工業試験場の報告では、焙煎前の茎に葉の約1.5倍のアミノ酸が含まれていました。②同一の茶樹から採った茎と葉を同じ条件で焙じて成分量を比べると、香りの指標が最も高かったピラジンは棒茶が葉ほうじ茶の約1.4倍、ゲラニオールとリナロールは約4倍でした(感じる香りの強さの倍率ではありません)。③1999年の報文は、茎が入る場合は150℃・12分、茶葉だけなら130℃・10分が適するとしています。

日本茶業中央会の緑茶の表示基準は、「茎茶又は棒茶」を「荒茶の仕上げ工程で木茎分離機などで選別された茶の茎や葉柄を多く含む茶」と定義しています。茎だけ、ではなく「多く含む」。

丸八製茶場(石川県加賀市)によれば、先端から四枚目まで摘む「一芯四葉」のような摘み方をすると、収穫した茶に茎も入ります。蒸し、揉みの工程で葉と茎が分かれ、葉は煎茶や玉露に、茎は茎茶や棒茶になる。地域によっては雁ケ音、白折とも呼ばれます。

名前の指す先は場所によってずれます。同社は、加賀市では「棒茶」が茎を使った焙じ茶を指すことが多いが、全国的には茎を使った緑茶を指すことが多いようだ、と書いています。焙じてあるかどうかが、言葉に入っていたりいなかったりします。

焙じる前から、茎と葉は中身が違う

上の数字は、石川県工業試験場が石川県立大学・丸八製茶場と行った共同研究と、1999年の日本農芸化学会誌の報文によります。前者は同一の茶樹から採った茎と葉を同じ条件で焙じた比較で、示されたのは成分の量であって、人が感じる香りの強さの倍率ではありません。後者の温度と時間も、その試験で使った茶と設備での結果です。

丸八製茶場は、お茶の味わいを主にカテキン(渋味・苦味)、アミノ酸(旨味)、カフェイン(苦味)の三つで説明しています。葉のお茶はこの三つが揃い、苦味・渋味・旨味が調和した味がしっかり感じられる。茎のお茶はカテキンやカフェインが少ない反面アミノ酸が多く、苦味・渋味が弱くさっぱりしながら旨味が感じられる。

石川県工業試験場の報告も、焙煎前の茎と葉のアミノ酸量を比べています。アミノ酸は茎に約1.5倍多く含まれていました。茶樹の中のアミノ酸は葉でカテキンに変化すると報告されており、その反応が少ない茎では残るのだろう、という見立てです。

焙煎の香りをつくるピラジン類は、アミノ酸と糖のメイラード反応で生まれます。茎に材料が多いことが、焙じたあとの差の説明として置かれています。

この先の五節では、同一の茶樹での比較を市販の棒茶10点・葉ほうじ茶6点で確かめ直した結果、焙煎が減らしている香り、産地ごとの焙じ方、家での飲み分けまで読めます。

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加賀棒茶という作り方

浅煎りは、焙煎を途中で止めたお茶ではありません。丸八製茶場の献上加賀棒茶は、一番摘みの茎を浅く焙じ、芳ばしさとすっきりした飲み口の両立を目指しています。同じ店の「ほうじたて」は、茎のブレンドが違います。

浅い竹の篩に広がる、淡い黄金色の細い茶の茎を描いた挿絵

深く焙じたほうじ茶のほうが、香りも豊かなのでしょうか。丸八製茶場の献上加賀棒茶は、浅く焙じることで目指す味わいを伝えています。比較相手になる「ほうじたて」も同じ店の棒茶ですが、違うのは焙煎の深さだけではありません。原料と火の入れ方を一緒に見ると、浅煎りという選択の意味がわかります。

加賀棒茶の浅煎りとは何か。焙煎を控えることではない

浅煎りは、焙煎を途中で止めたお茶という意味ではありません。丸八製茶場は、芳ばしい香りを保ちながらすっきり飲める新しい浅煎りを生み出したと説明しています。焙煎の深さは、足りるか足りないかの尺度ではなく、どんな一杯にするかの選択です。

商品説明から読めるのは三つです。①献上加賀棒茶は、一番摘みの茎を浅く焙じたお茶です。②焙煎には遠赤外線セラミックバーナーを使い、熟練者がその日の原料の状態を見て調整すると紹介されています。③同じ店の「ほうじたて」は一番摘みと二番摘みの茎のブレンドで、焙煎の深さだけでなく原料の組み合わせも違います。

丸八製茶場は、芳ばしい香りを保ちながら、すっきりと飲める新しい浅煎りを生み出したと説明しています。献上加賀棒茶は、一番摘みの茎を浅く焙じたお茶です。焙煎香をひたすら強くする以外にも、お茶の仕上げ方があります。

「浅い」と聞くと、途中で火を止めただけのように思えるかもしれません。しかし、この商品の説明では、芳ばしさとすっきりした飲み口を両立させることが目標です。焙煎の深さは、足りるか足りないかの尺度ではなく、どんな一杯を作るかという選択として読めます。

棒茶の「棒」は、茎のこと

この記事の根拠は、丸八製茶場が自社で公開している二つの商品説明と、石川県工業試験場が紹介した茎と葉の焙煎比較です。商品説明は仕上がりの狙いを、研究は同じ条件で焙じた茎と葉の成分の違いを書いています。商品説明のほうに、温度や時間の数値はありません。

棒茶の「棒」が示すのは、原料の茎です。石川県工業試験場が紹介した研究では、茎と葉を同じ条件で焙煎しても、香り成分の構成に違いが見られました。火の入れ方をそろえても、原料の違いが消えるわけではありません。

この研究は石川県立大学・丸八製茶場との共同研究で、対象の試料と条件に限った比較です。すべての茎茶が葉のお茶より香るという順位表にはできませんが、棒茶を「ほうじ茶の形が違うだけ」と捉えない手がかりになります。

残りの三節では、その日の原料に合わせて同じ浅煎りを作る調整、「ほうじたて」と違う二つの条件、飲み比べで香ばしさと飲み口を分けて確かめる方法を読めます。

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