お茶は、焙煎でもっとおもしろい。

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「渋くない」の中身を、成分で説明する

第8章・公開 2節/全4節

香りを象徴する曲線が立つほうじ茶と、茶葉のスケッチを描いた開いたノートのイラスト。

「渋くない」「香ばしい」という感想を、成分の言葉に置き換えます。

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香りに効いている成分は、どれか

ほうじ茶の香りは1973年の報告までさかのぼり、21種類のピラジン類が報告されています。ただし成分の量の順位は、香りの強さの順位ではありません。石川県工業試験場の総説と1999年の報文で確かめます。

香りを象徴する曲線が立つほうじ茶と、茶葉のスケッチを描いた開いたノートのイラスト。

湯のみから立つ香りを成分の名前で言い直すのに、どれくらいの手間がかかるのか。研究の側から見ると、それは香りを分け、嗅ぎ、数えるという長い工程になります。

香りを取り出し、人の鼻と成分分析で調べる方法を、1973年以降の報告からたどります。一本ずつが何を使って何を測り、どこまでを結論としたのかを見ていきます。

ほうじ茶の香りは、研究でどう調べられてきたのか

ほうじ茶の香りは、1973年の報告までさかのぼって調べられています。緑茶と、200℃で数分間焙煎したほうじ茶を比べ、ほうじ茶が21種類のピラジン類を含み、それらが焙煎で著しく増えることが報告されました。香りの骨格は、半世紀前におおよそ描かれています。

読み方は三段構えです。①成分表は抽出法によって変わるので、数字は取り出し方まで込みで読むことになります。②ガスクロマトグラムのピークの大きさと香りの強さに相関はなく、成分の量から強い香りを特定することはできません。③そこで香気抽出物を段階的に薄め、人の鼻で嗅ぎ取れる最大希釈倍率を求めるAEDAが併用され、その倍率がFDファクターと呼ばれます。

石川県工業試験場の総説によれば、山西らは緑茶と、200℃で数分間焙煎したほうじ茶の香気成分を比べ、ほうじ茶が21種類のピラジン類を含み、それらが焙煎で著しく増加したことを1973年に報告しています。同じ年、原らはほうじ茶に、焙煎で生成するピラジン類、ピロール類、フラン類が多く含まれることを報告しました。

1999年の報文も、山西らがほうじ茶の香気から66の化合物を同定したと紹介しています。香りの骨格は、半世紀前におおよそ描かれていました。

抽出法が変われば、成分表も変わる

以下で引くのは、石川県工業試験場の総説と棒茶の研究、1999年の日本農芸化学会誌の報文、2018年の棒茶のメタボロミクス論文、農研機構の報告、そして科学研究費の成果報告書です。試料も抽出法も報告ごとに違い、希釈のきざみもそろっていません。FDファクターの倍率は、それぞれの研究の中で読むことになります。

1999年の報文は、それまで茶の香気濃縮物の調製に使われてきたSDE法や減圧蒸留法について、水溶性の揮発性成分が回収されにくい、試料をつくる段階で葉の中の成分が変わってしまうといった欠点があり、飲むときの香気パターンを調べるには不適切だと述べています。そこで、浸出液を有機溶媒で抽出する方法に切り替えました。

農研機構が焙煎した茶を調べたときは、茶200gから減圧蒸留と高真空蒸留で香気エキス0.1mLを取り、ジクロロメタンで10倍、100倍、1000倍、10000倍に薄めました。石川県工業試験場の棒茶の研究では、抽出液に攪拌子を入れて成分を吸着させ、加熱して脱着させています。市販品を何点も比べるときは、粉砕した茶葉0.5gを80℃に温めたバイアルの空気から30分かけて集めました。

どれが正しいという話ではなく、何を取り出せる方法かが違います。成分表を読むときは、その手前の抽出法まで込みで見ることになります。

この先の五節では、FDファクターが最も高かった成分とその倍率、新しく生まれる香りと結びつきがほどけて出てくる香りの違い、好みと成分表の結び方、各研究が断っている範囲まで読めます。

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焙じたての香りは、どのくらいで落ちるのか

丸八製茶場は、お茶の風味を損なう要因に空気・湿気・光・温度の変化を挙げています。開封したら袋の口を閉じ、早めに飲みきる。出荷前の焙煎と家庭での扱いを分けると、直せる点が見つかります。

棚に置いた蓋付きの茶缶と、開いた茶袋、茶さじのイラスト

袋を開けたときの香りが好きで、大切なお茶ほど少しずつ取っておきたくなる。けれど保存を考えるときは、「長く持っておく」ことと「好きな風味を楽しむ」ことを分ける必要があります。茶商の出荷前の仕事と家庭での扱いをたどると、焙じたてという言葉の先に、袋を閉じる日々の動作が見えてきます。

ほうじ茶の保存方法。空気・湿気・光・温度の変化を避ける

乾燥した茶葉の保存でまず避けたいのは、空気、湿気、光、温度の変化です。開封したら袋の口を閉じ、早めに飲みきる。直射日光、熱や湯気の出る場所、強い匂いのものの近くを外すだけでも、置き場所は整います。

確かめる点は三つです。①丸八製茶場は空気・湿気・光・温度の変化を風味を損なう要因に挙げ、一保堂茶舗は日光・高温・湿気・強い匂いを避けるよう案内しています。どちらも、開封後は袋の口を閉じることをすすめています。②ここで扱うのは乾燥した茶葉の保存で、淹れたお茶の保存とは分けて確かめます。③焙煎が出荷に合わせて行われることもあり、火を入れてから包むところまでが一続きの仕事として設計されています。

芭蕉園茶舗は、出荷直前に経験のある担当者が気候や気温、茶葉の状態を見て火の入れ方を判断すると説明しています。さらに二度目の焙煎を行い、揮発しやすい香りを個包装に閉じ込めるとしています。火を入れ、包むところまでが一続きの仕事です。

ここで注目したいのは「二度」という回数だけではありません。出荷に合わせて焙じ、そのあとに包装する順序です。茶葉の香りを作る工程と、その香りを届ける工程を合わせて設計していることが伝わります。

家庭での保存は、置き場所と袋の閉じ方から

以下の案内は、丸八製茶場、一保堂茶舗、芭蕉園茶舗がそれぞれ公開しているものです。三軒とも、置き場所と袋の閉じ方、飲みきる時期の考え方を書いています。保存できる期間の数値や、味の変化を測った結果は示されていません。

丸八製茶場は、お茶の風味を損なう要因として空気、湿気、光、温度の変化を挙げ、開封後は袋を密封して早めに飲むよう案内しています。一保堂も、乾燥した茶葉を日光・高温・湿気・強い匂いから遠ざけ、袋の口を閉じて保管するよう案内しています。ここで扱う保存方法は乾燥した茶葉のもので、淹れたお茶の保存とは分けて確認します。

保存場所は「棚に入っているか」だけでなく、どんな環境の棚かを見ます。直射日光が当たらないか、熱や湯気の出る場所のすぐ近くではないか、強い匂いのものと一緒になっていないか。保存条件を台所の具体的な場所に置き換えると、直せる点が見つかります。

茶葉を取り出したら、袋の口を閉じてからほかの支度へ移ります。開封した日を袋に書いておけば、どれを先に開けたかの目印にもなります。日付を独自の品質期限にするためではなく、開けたものから楽しむ順を決める方法です。

袋を開けたときと、淹れたときの香りを比べる

家庭で観察するなら、袋を開けたときの香りと、淹れたときの印象を別々に書いておく方法があります。違いがあっても原因を保存だけに決めず、茶葉量や淹れ方も振り返ります。香りを思い出だけで比べるより、自分の扱い方を確かめやすくなります。

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