焙じ香は、どんな成分でできているのか。ここでは棒茶を扱った二つの研究の記述を読みます。成分名が並びますが、覚える必要はありません。どこまでが報告されていて、どこからが書かれていないのかを見ます。成分名は覚えなくても、話の筋は追えます。線の引き方を見るつもりで読んでください。
温度が上がると、増えた成分
棒茶の焙煎を扱った研究は、焙煎温度が高いほどピラジンとゲラニオールの生成が増えると報告しています。原文は pyrazine ですが、この研究で分析されているのはピラジン類なので、単一の物質の結果としては読みません。温度という一つの条件と、生成量の向きが結びつけられた記述です。棒茶の試験という枠の中の話になります。
ただしこれは、その研究の試料と条件での結果です。高温にするほど無制限においしくなる、という話ではありません。成分が増えることと、飲んでおいしいと感じることは、別に測るものです。増えることと、おいしくなることは別に確かめる話になります。そこを混ぜないでおきます。
市販の棒茶で、最も強かった成分
におい・かおり環境学会誌に載った報告では、分析した市販の棒茶で最もFDファクターの高い香気成分は2-エチル-3,5-ジメチルピラジンであり、2-エチル-3,6-ジメチルピラジンがこれに続いたとされています。順位が付けられていて、その上位が示されている報告です。市販品を分析した結果になります。
FDファクターについては、同じ論文に説明があります。香気抽出物を段階的に希釈し、カラム分離後に溶出した成分の香りを人の鼻で嗅ぎ取り、嗅ぎ取れる最大の希釈倍率を評価する。その倍率がFDファクターで、香りの強度を示すとされています。指標の中身は論文の側に置いて、ここでは順位の形だけを読みます。それで十分に伝わります。
順位も、量も、そのまま一般化しない
この順位が、どのほうじ茶でも同じになるとは書かれていません。原料も焙煎も違えば、並び方は変わります。FDファクターを、飲んだときの香り全体の強度や、成分の含有量のランキングと同じものとして扱うのも避けておきます。条件が違えば並び方も変わると考えておきます。機器の値と、鼻で感じる強さも別のものです。
そして、香りをかぐことで特定の健康効果が得られる、という話はこの二つの報告には出てきません。香りの正体を少しずつ言葉にしていく。研究の記述を読む楽しみは、分からない範囲がはっきりしてくるところにあります。急がず読めます。
