焙烙がなければ、フライパンでも茶葉は焙じられます。弱火にかけて木べらで動かしていると、色が変わり、部屋の匂いが変わります。困るのは、どこで止めるかです。浅煎り・中煎り・深煎りと三段階に分けたいのに、その三段階を決める物差しが、台所には置かれていません。

家で三段階に焙じ分けるとき、何を三段階と呼ぶか

時間で分けます。フライパンも茶葉の量も火加減も3回とも同じにして、変えるのは止めるまでの長さだけ。色は数値にせず、3つを同じ紙の上に並べて、同じ光で写真に撮って残します。高知県の試験が、温度をそろえて機械の中にいる時間を変えたのと同じ立て方です。

色を物差しにしてよいことは、確かめられている

色を物差しにしてよいことは、確かめられています。「180℃、200℃、220℃で確かめられたこと」の節で見た石川県の2020年の報告は、茎茶を180℃・200℃・220℃で焙じて茶葉そのものの色を測り、どの温度で焙じても L*a*b* という3つの値が通る道筋は同じだった、と書いています。ただし同じ報告は、赤みの a* ではなく、明るさの L* と黄みの b* を見ることを勧めています。L* は焙じ始めにいったん上がってから下がるので、明るさだけを見ていると、焙じ始めのものとだいぶ進んだものを取り違えます。3つを同じ紙に並べて撮るのは、そのためです。

色の数値は、測り方で変わる

絶対値のほうは、測り方で変わります。高知県の試験は、ほうじ茶を粉砕機で粉にしてから測色していて、一番茶の a* は浅炒1.34・深炒5.11でした(同じ報告の表4・2014年のデータ。この色を測った試料は、3段階に作り分けた2013年の試料とは別に浅炒・深炒の2段階で作られていて、深炒の回転数は10回転です)。石川県は茶葉のまま測っています。色差計のメーカーは同じでも、粉にするかどうかで数字は動きます。家で数値化しないのは、道具が無いからというより、数値にしたところで持ち出せないからです。焙じる相手が葉か茎かで何が変わるかは、第7章で見ます。