家で茶を焙じてみたい。そう思ったときに困るのが、手順が店ごとに違うことです。ここでは手順を公開している茶商の説明を、混ぜずにそのまま並べます。どちらかを選んで、書かれているとおりにやるのが確実です。道具が違えば条件も別だと考えておくのが安全です。混ぜたくなるのを、一度我慢します。

焙烙という道具

茶小泉は焙烙を、持ち手の部分を持って、中に入れたものを火にかざし炒る道具だと説明しています。均等に炒るために手首を軸に振り、焙烙の中のものを転がすようにするとしています。振る、ではなく転がす、という言い方です。転がすという言葉が、動かし方を具体的に示しています。振るのとは、少し違う動きです。

道具の形が、そのまま動かし方を決めています。鍋のように置いて待つのではなく、手で持って火との距離をつくる。そこが焙じるという作業の肝だと、この説明からは読めます。置いて待つ道具ではない、というところが分かれ目です。手で火との距離を作る道具です。焙じるという言葉の意味とも、つながっています。

焙烙の手順(藤田茶園)

藤田茶園の手順は四つです。まず焙烙を中火で30秒から1分温めます。次に茶葉を入れ、焦がさないように焙烙を動かします。煙が出てきたら、そろそろの合図。好みの炒り具合になったら、持ち手の部分から出します。時計ではなく、煙と見た目で止める手順になっています。四工程とも短い言葉で書かれています。

茶葉の量は5から10グラムが目安とされています。時間ではなく、煙と好みで止める手順になっているところが特徴です。この時間と量は、この手順での目安です。すべての器具に当てはまる条件ではありません。少なめから試すと、うまくいかなくても次に回せます。数字は、当該手順での目安です。

フライパンは二段階(茶小泉)

茶小泉のフライパンの手順は二段階です。第一段階では、熱したフライパンにお茶を入れ、中火でお茶を乾燥させます。これをいったん皿に移して冷まします。第二段階で、乾燥したお茶を強火で炒ってほうじ茶にします。乾かす工程と炒る工程を分けているのが、この手順の特徴です。火力も段階で変わります。

皿に移した後も余熱で焙煎が続くため、冷めるまで皿の上で茶葉を転がすとされています。素早く冷却することで香りを閉じ込める、という説明です。出来上がった茶葉は、少し時間がたってからのほうが良い香りがするとも書かれています。火から外しても、まだ進んでいるという注意です。休ませてから飲むという案内も添えられています。

混ぜないで、どちらかに従う

二つの手順は、道具も段数も違います。焙烙の予熱時間をフライパンに持ち込んだり、二段階の考え方を焙烙の手順に混ぜたりすると、どちらの再現でもなくなります。まずは片方を、そのまま試すのが確実です。どちらかに決めて、そのままやるほうが結果が読めます。比べたいなら、次の回に替えます。

土鍋の手順は、公式の本文を取得できなかったので今回は扱いません。それから、古い茶を焙じれば保存の悪さや傷みが解消する、とは言えません。焙じるのは香りをつくる工程で、状態を戻す工程ではありません。焙じても戻らないものがある、という線は引いておきます。鮮度は、焙煎の前の話です。