焙煎の道具は、どう変わってきたのか。全国の年表は今回の出典では作れません。ここでは一社の自社史と、一本の試験報告という二つの記録から、加熱方式にどんな工夫があったのかを読みます。二つの記録から読めるのは、変化の断片です。年表ではなく、工夫の中身のほうを見ます。

砂の混入を避ける、という課題

丸八製茶場は、昭和40年代に入り、食の安全性への意識が高まる中で、砂炒りのおいしさをそのままに、砂の混入の可能性がない焙煎の方法を模索したと説明しています。自社の歴史としての記述です。課題が先にあって、方法があとから来ているという順番です。時期は昭和40年代とされています。

ここで動機になっているのは、味を上げることではありません。砂が混じるかもしれないという課題を外すことです。おいしさを保ちながら、別の方法に置き換える。工夫の出発点が、はっきり書かれています。何のために変えたのかが、はっきりしている記録です。味を守りながら、方法を替えました。

遠赤外線と熱風の併用

1988年に日本茶業学会で報告された試験では、静岡機械製作所で開発した遠赤外線火入れ機が紹介されています。トラフコンベヤーの上に遠赤外線ヒーターを取り付け、コンベヤーの下から熱風を送って火入れをする併用方式です。上と下から、別の伝え方で熱を当てる装置です。

上から赤外線、下から熱風。二つの伝え方を組み合わせています。一つの方式で足りないところを、別の方式で埋める。装置の説明を読むと、方式の名前が排他的な分類ではないことがよく分かります。併用という言葉が、そのまま構造を説明しています。名前の分類より、構造を見るのが早いです。

年を、ずらして読まない

気をつけたいのは年の扱いです。論文の発行日は、その技術が開発された年でも、販売が始まった年でもありません。遠赤外線を茶の焙煎に初めて使った年も、全国で機械化が始まった年も、今回の出典では確認できませんでした。日付は、日付が示すことだけに使います。

それから、この試験は緑茶の仕上げの火入れについてのものです。そのままほうじ茶製造の実証として紹介することはできません。分かるのは、二つの記録に残った工夫の中身までです。起源の話は、別の記事にゆずります。分かった範囲を、そのまま置いておきます。足りないところは、次の資料を待ちます。