ほうじ茶の説明には、火の強さが書いてあります。「強火で」「高温で一気に」。数字まで書いてあるものは多くありません。数字が並ぶのは研究のほうで、石川県の試験場と大学が棒茶を焙じた2020年の報告に、180℃、200℃、220℃の三つが出てきます。

この三つの温度で、何が確かめられたのか

確かめられたのは、その範囲では温度が高いほど香ばしい香りの成分が増え、色が黄緑から黄赤へ動くことです。確かめられていないのは、その温度で茶葉が何度になっていたか、です。

180℃は、ドラム内面の温度だった

では、180℃という数字は何を指しているのか。この報告の温度は、赤外線温度計で測ったドラム内面の温度でした。茶葉の温度ではありません。他の報告も測る場所が違い、書いていない資料もあります(表 5-4-1)。

表 5-4-1焙煎と火入れの温度は、資料ごとに測っている場所が違う

出どころ(年)温度何を測った温度か時間
塩野1974 棚式65℃排気温度5時間
日本茶業中央会「緑茶の表示基準」別紙火入れ70〜130℃/焙じ140℃以上記載なし記載なし
塩野1974 透気式90〜110℃機内温度20〜25分
高橋2015100℃程度(上級茶80℃)記載なし30〜40分
高知県(表1・2013年)2回目の排気温100℃(浅炒・中炒・深炒とも同じ)排気温記載なし
農研機構2015100/115/130℃茶表面温度記載なし
川上1999150/130/100℃記載なし12分/10分/15分
塩野1974 胴あぶり式140〜150℃排気温度40〜60分
原1970160〜180℃ドラム内壁温度記載なし
Sasakiら2020180/200/220℃ドラム内面温度(赤外線温度計)40〜420秒
GJTA(業界団体)200℃記載なし10分以上
焙煎と火入れについて、資料ごとの温度・測定箇所・時間を、温度の低い側から並べた。「記載なし」はその資料に書かれていないことを示し、推定で埋めていない。時間は出典に書かれた値だけで、換算はしていない。表示基準の行は茶種の定義ではなく、表示の責任者を区分する例示欄。高知県の行は時間の記載がなく、報告が記録しているのは排気温と回転数(一番茶はドラム回転数17/12/8rpmで作り分け、1回目は排気温90℃・22rpm)。GJTA(Global Japanese Tea Association)は業界団体の解説。出典:塩野輝雄(1974)、高橋淳(2015)、高知県農業技術センター茶業試験場(2013年のデータ)、農研機構 野菜茶業研究所(2015)、原利男・久保田悦郎(1970)、川上美智子・山西貞(1999)、Sasakiら(2020)、日本茶業中央会「緑茶の表示基準」(令和8年最終改正)、GJTA。