夏の冷蔵庫には、麦茶のポットがいつも冷えています。秋になると、その横にほうじ茶の急須が並びはじめます。どちらも茶色で、どちらも香ばしい匂いがします。似ているようで、生まれた畑がちがうのです。

グラスに注げば、色までよく似ています。

茶の木の葉と、麦の穂

袋の口から、焙じた葉と、丸い麦の粒がのぞいています。ほうじ茶は茶の木の葉から、麦茶は麦の粒からできているのです。

表示の決まりでは、ほうじ茶は煎茶や番茶などを強い火で焙ったものです。麦茶の原料は、小粒や大粒の大麦、はだか麦だと、麦茶をつくる会社が説明しています。名前に「茶」とついても、麦茶は茶の木を使わない飲みものなのです。

原料のちがいは、そのままカフェインのちがいになります。

カフェインのある茶色、ない茶色

夕方の台所で、今夜はどちらを沸かすか少し考えます。カフェインがあるのはほうじ茶で、麦茶にはないのです。

国の睡眠の手引きは、茶類のカフェインは茶の葉にふくまれると書いています。そのうえで、茶の葉を使わない麦茶を、カフェインのない飲みものとして挙げています。ほうじ茶の液は、国の成分表で煎茶と同じ値です。

焙じた色が濃くても、カフェインが消えるわけではありません。ほうじ茶の量の読み方は、ほうじ茶のカフェイン量は?煎茶・番茶・紅茶と条件をそろえて比較で扱っています。つぎは、火の入れ方でしょう。

薄い葉と、厚い粒

フライパンで茶葉を焙じると、葉はすぐに色を変え、細い煙が立ちます。ほうじ茶は仕上がった茶にあとから火を入れ、麦茶は粒そのものを中心まで煎るのです。

麦茶の会社は、選んだ麦を中心まで煎り上げると説明しています。煎る回数は二、三回ほどで、砂といっしょに煎る工程を公開している会社もあります。香ばしさは、どちらも熱で生まれた香りです。

穀物の焙じ方は、麦茶・そば茶・玄米茶の違いに続きがあります。つぎは、湯の使い方でしょう。

急須の短い時間、やかんの長い時間

やかんの湯がわくと、麦の香りが台所いっぱいに広がります。ほうじ茶は熱湯で短く淹れ、麦茶は湯で煮出して置くのです。

国の成分表でも、ほうじ茶は短く浸した液、麦茶は沸かした湯に入れて置いた液で測っています。麦茶の会社は、やかんでしっかり煮出すのがよいと説明しています。ほうじ茶は、浸す時間をのばすほど、カフェインや渋みのもとが多く溶け出します。

資料で言えるのは、それぞれの標準の作り方までです。ほうじ茶の淹れ方は、ほうじ茶の「90℃・30秒」はどこから?でたどれます。最後は、どちらを手に取るかでしょう。

冷蔵庫の前で、どちらを選ぶか

冷蔵庫の扉を開けると、冷えた空気が足もとに流れます。選ぶ手がかりは、カフェインと、香りの好みと、手間の三つなのです。

夜や子どもの一杯でカフェインを避けたいなら、茶の葉を使わない麦茶です。茶の葉の香ばしさを楽しみたいなら、ほうじ茶でしょう。急須で一杯ずつ淹れるか、やかんでまとめて作るかも、目安になります。

どちらが体によいかは、資料からは決められません。数字と出典は、このあとにまとめて置いておきます。

数字でくわしく

ほうじ茶の定義
日本茶業中央会「緑茶の表示基準」実施細則の表1は、ほうじ茶を「煎茶や番茶などを強い火で焙って製造したもの」としています。
麦茶の原料と工程
麦茶メーカーの丸菱によると、原料は国内産の小粒大麦・大粒大麦・はだか麦で、最近は外国産の大麦も使っています。通常200〜280℃で、2〜3回程度煎ります。
砂炒り
小川産業は、六条大麦と珪砂を1号釜で250度・1分、続く2号釜で150度・1分煎る工程を公開しています。
カフェイン
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年で、ほうじ茶の浸出液は100mLあたり0.02g(20mg)です。麦茶の浸出液の欄には、カフェインの値が載っていません。150mLの湯のみのほうじ茶は約30mgです〔計算値〕。
茶の葉と麦茶
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、茶類のカフェインは茶葉(チャノキ)にふくまれるとし、茶葉を使わない麦茶などへの置きかえを挙げています。同じガイドのQ&Aには「カフェインレスの麦茶」とあります。丸菱も、麦茶はカフェインとタンニンをふくまないとしています。
浸出の条件
成分表の条件は、ほうじ茶が茶葉15g・90℃の湯650mL・0.5分です。麦茶は、麦茶50g・湯1500mL・沸騰後5分放置です。丸菱は、やかんなどで5分以上煮出したものがよいと説明しています。
味の説明
ほうじ茶は農林水産省の解説(aff 2022年4月号)、麦茶は丸菱の説明によります。
時間と溶け出す量
米田泰子・加藤佐千子(1994)の報告です。ほうじ茶をふくむ茶で浸出時間を0.5分から4分まで振りました。茶全般で、のばすほど溶出量が増え、3〜4分で横ばいになりました。