冷蔵庫には冷えた麦茶、そば屋ではそば茶、急須には玄米茶があります。どれも香ばしい「お茶」ですが、焙じているものは同じではないのです。
この文章では、大麦、そばの実、米、茶葉を作り方の順に並べ、焙煎がほうじ茶だけの話ではないことをたどっていきます。
煎り上げてから、くだく麦
ティーバッグを振ると、中で細かな粒がさらさらと鳴ります。麦茶では、焙じる工程と、粒を整える工程が別にあるのです。
麦茶を作る会社の説明では、原料は小粒の大麦、大粒の大麦、はだか麦です。選り分けた麦を焙煎機に入れ、中心まで煎り上げます。ティーバッグ用は、そのあと麦をほどよい粒にくだいてから袋に詰めるのです。
袋の中の粒だけを見ていると、この順序は見えにくいものです。資料で言えるのは、もとの麦を焙じ、それから飲み物の形に整える、というところまでです。つぎは、砂といっしょに煎る麦の話でしょう。
砂といっしょに煎る麦
釜の中で、麦は熱い砂にまぶされるように転がるのでしょう。茶葉だけでなく、麦にも砂を使う焙じ方があるのです。
浜の砂が日を受けて熱をためるように、ここでは熱をためた砂の中で麦を煎ります。国産の大麦を使う会社は、麦と珪砂を釜に入れ、二つの釜で温度を変えて短く煎る工程を公開しています。茶葉の砂炒りを知っていると、つながりが見える話です。
別の会社は、もっと広い温度の幅で何度か煎ると書いていますが、これは各社の機械と工程の数字です。高いほうが深いと並べたり、家のフライパンに移したりする共通の表ではないのです。麦のつぎは、そばの実でしょう。
琥珀色の、そばの実のお茶
湯のみに注ぐと、そば茶は澄んだ琥珀色に光ります。そば茶で焙じるのは、茶葉ではなくそばの実なのです。
そば粉を扱う会社の説明では、そば茶はそばの実を焙じた穀物茶です。まろやかな味と、香ばしい香りがあると紹介されています。麦茶と同じく、茶の樹の葉を原料にしたお茶ではありません。
名前に「茶」とついていても、原料が茶葉とはかぎらない、資料で言えるのはそこまでです。茶葉と穀物がいっしょに入るのは、つぎの玄米茶でしょう。
炒った米と、茶葉の袋
玄米茶の袋をのぞくと、緑の茶葉のあいだに、きつね色の米粒がまじっています。玄米茶には、米を炒る工程と、茶葉と合わせる工程があるのです。
お茶の会社の説明では、米を水に浸して蒸し、それを炒ってから、番茶や煎茶などをほぼ同じ量だけ加えます。ほうじ茶は、茶葉そのものを炒って香ばしさを引き出します。玄米茶では、香ばしさを担うのは炒った米で、茶葉と一つの袋に入るのです。
同じ香ばしいお茶でも、焙じたものを探す場所がちがう、資料で言えるのはそこまでです。最後は、四つを動詞で並べる話でしょう。
棚の四つを、動詞で並べる
台所の棚に、麦茶、そば茶、玄米茶、ほうじ茶の袋が並んでいます。名前より、何をどうしたかで並べるほうが、ちがいは見えやすいのです。
麦茶は大麦を焙じ、そば茶はそばの実を焙じます。玄米茶は炒った米と茶葉を合わせ、ほうじ茶は茶葉を焙じるのです。似た香りがしても原料はちがい、原料がちがっても焙煎という工程でつながっています。
飲みくらべるときは、先に原材料と作り方を確かめてから香りを言葉にすることになります。そうすると、いつもの棚が、身近な加工の見本に見えてくるのです。会社の名前と数字は、このあとにまとめて置いておきます。
数字でくわしく
- 麦茶の原料
- 丸菱「麦茶の雑学辞典」によると、原料は小粒大麦、大粒大麦、はだか麦です。
- 麦茶の工程
- 精選した麦を焙煎機に入れ、中心部まで煎り上げます。ティーバッグ用は、焙煎後に適度な粒へ粉砕して袋詰めします。
- 丸菱の温度
- 通常200〜280°Cで、2〜3回程度煎る工程も説明されています。
- 砂炒りの工程
- 小川産業は、国産の六条大麦を使う工程を公開しています。1号釜に麦と珪砂を入れて250度で1分、続く2号釜で150度で1分煎ります。
- そば茶
- 日穀製粉の説明では、そばの実を焙煎した穀物茶です。琥珀色の水色、まろやかな味、香ばしい香りと紹介されています。
- 玄米茶
- 伊藤園「お茶百科」の説明です。米を水に浸して蒸し、炒ってから、番茶や煎茶などをほぼ同量の割合で加えます。
- 数字の読み方
- これらの温度と時間は各社の機械と工程の数字です。焙煎の深さを並べる共通の表ではありません。

