夕食の片づけを終えると、台所に静けさが戻ります。急須に湯を注ぐと、香ばしい湯気が夜の空気にほどけていきます。ほうじ茶は、寝る前でもやさしそうに見えるお茶です。けれど、その一杯にもカフェインは入っているのです。

この文章では、一杯の量、眠りに関わる量、飲む時刻、夜の置きかえの順にたどっていきます。

香ばしさと、茶の葉の成分

湯のみの中の茶色は、焙じた葉の色です。ほうじ茶は、焙じても茶の葉のカフェインを持ったままのお茶なのです。

国の睡眠の手引きは、茶類のカフェインは茶の葉にふくまれると書いています。深く焙じても、試験場の測定で減ったのは一割ほどでした。香ばしさは火がつくったものですが、カフェインのほうはあまり動かないのです。

資料で言えるのは、ほうじ茶にもカフェインがあるということまでです。焙煎で減る量は、焙煎でカフェインは減る?でたどれます。つぎは、眠りに関わる量でしょう。

眠りに届く量

枕もとの時計が、小さく秒を刻んでいます。眠りに関わるのは、一杯の量より一日に重ねた量なのです。

国の睡眠の手引きは、一日の総量が多いと、朝にとっても夜の眠りに響くことがあると書いています。脳波で測った研究では、量が増えるほど深い眠りが減り、夜中に目が覚めやすくなりました。海外の評価にも、寝る直前の一回の量で、一部の大人の眠りが妨げられるとするものがあります。

湯のみのほうじ茶なら、その一回の量に届くのは三杯あまりです〔計算値〕。

感じ方は、人によって大きくちがうのです。量のつぎは、時刻でしょう。

夕方からの、ゆるやかな下り坂

西の窓が、ゆっくりと茜色に変わっていきます。カフェインは、時間をかけて少しずつ体から抜けていくのです。

夕暮れの影がのびていくように、体に残る量は時間とともに薄まります。抜ける速さを中ほどに置いた手引きの例では、夕食どきの量の半分が真夜中にも残ります。そのため手引きは、夕方以降は控えめにするよう勧めています。

抜ける速さは、人によってかなりちがいます。夜の一杯を、別のお茶に替える方法もあります。

やかんの麦茶と、夜の湯のみ

冷蔵庫には、昼に沸かした麦茶のポットが冷えています。茶の葉を使わない麦茶には、カフェインが入っていないのです。

国の睡眠の手引きも、麦茶やそば茶、黒豆茶、とうもろこし茶への置きかえを挙げています。麦の焙じ方は、麦茶・そば茶・玄米茶の違いで読めます。昼はほうじ茶、夜は麦茶と、時刻で替える飲み方もあります。

資料で言えるのは、置きかえの例までです。飲みものごとのカフェインを一枚に並べた表は、ほうじ茶のカフェインはいつ・誰が気にする?にあります。湯のみをすすぐ水の音が、夜の台所に小さく響きます。

数字でくわしく

一日の総量
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、1日のカフェイン摂取量が400mgを超えると、1日のどの時点であっても睡眠に悪影響を与える可能性があるとしています。
夕方以降
同じガイドは、夕方以降に100mg以上を摂ると、入眠困難や徐波睡眠(熟睡)の減少、中途覚醒の増加が生じるとしています。
半減期
日本人の血中半減期は3〜7時間とばらつきがあります。半減期5時間の場合、19時に100mgを摂ると、24時に50mg分が残るという計算例が載っています。
時刻の研究
ガイドが引く18〜65歳の系統的レビューです。107mgを超えると就寝の約9時間前でも、217.5mgを超えると約13時間前でも、夜間の睡眠に影響しました。
就寝直前
オーストリア保健・食品安全局(2017年)は、就寝直前に1回100mg(体重70kgで約1.4mg/kg)で、一部の成人に睡眠障害が起こり得るとしています。子どもでも同様の影響が起こり得るとしています。内閣府食品安全委員会のファクトシートによります。欧州食品安全機関も、100mgの単回摂取が、特に就寝前に睡眠に影響し得るとしています。
一杯の計算
ほうじ茶の浸出液は100mLあたり20mg(茶葉15g・90℃の湯650mL・0.5分)で、150mLの湯のみ1杯は約30mgです。100mgに届くのは約3.3杯です〔計算値〕。
焙煎
高知県農業技術センター茶業試験場の試験(2014年のデータ)で、深炒のカフェインは荒茶より6〜13%減りました。
置きかえ
睡眠ガイドは、茶類のカフェインは茶葉(チャノキ)にふくまれるため、茶葉を使わない飲みものへの置きかえを挙げています。例は、麦茶、そば茶、黒豆茶、とうもろこし茶、カフェインをふくまないハーブティーです。