夕方の台所で、やかんの湯がしずかに鳴りはじめます。体調の落ちついた日には、香ばしいお茶が恋しくなることもあります。袋の裏を見ても、カフェインの量は書かれていません。手がかりは、袋の外の資料にあるのです。

この文章では、湯のみ一杯の量、妊娠中と授乳中の目安、一日の勘定の順にたどっていきます。

湯のみ一杯の、香ばしい湯気

湯のみを両手で包むと、焙じた葉の香りがやわらかく立ちます。ほうじ茶にも、煎茶と同じくらいのカフェインが入っているのです。

国の食品の成分表では、ほうじ茶の液は煎茶の液と同じ値です。焙じると減るという話もありますが、試験場の測定では、深く焙じても一割ほどの減りでした。焙じたお茶だから、ほとんど入っていないとは言えないのです。

濃く淹れれば、一杯の量はこれより増えます。測られているのは、決まった条件で淹れた一杯です。条件のそろえ方は、ほうじ茶のカフェイン量は?煎茶・番茶・紅茶と条件をそろえて比較に続きがあります。つぎは、妊娠中の目安でしょう。

一日の勘定に、湯のみを置く

壁のカレンダーに、健診の日が丸で囲んであります。妊娠中の目安は、一杯ではなく一日の総量で置かれているのです。

欧州の機関は、一日の目安の量までなら、おなかの子に健康のリスクは生じないとしています。世界保健機関は、多くとっている妊婦に量を減らすよう勧めています。妊娠中は、血液からカフェインが抜けるのが遅くなると説明されています。

湯のみ一杯のほうじ茶は、欧州の機関の一日の目安の、七分の一ほどにあたります〔計算値〕。

国の睡眠の手引きは、はっきりした影響を示す研究はないとしつつ、できるだけ控えるよう勧める国や学会があると書いています。資料で言えるのは、目安の数字と、その幅までです。授乳の時期にも、目安が置かれています。

授乳のあいまの一杯

夜中の授乳を終えると、台所の小さな灯りだけがともっています。授乳中も、妊娠中と同じ値の目安が紹介されているのです。

欧州の機関は、授乳中の人にも、一回の量と一日の量の両方で同じ値を目安にしていると紹介されています。カナダの機関は、妊婦と授乳中の人をまとめて、少し高い値にしています。

機関ごとに値がちがうので、一つの数字だけを覚えるより、幅で見るほうが確かです。一日の勘定には、お茶のほかの飲みものも入ります。

コーヒーも紅茶も、同じ帳面に

棚にはコーヒーの瓶と、紅茶の缶も並んでいます。目安の数字は、食べものと飲みもの全体からとる量なのです。

茶やコーヒーのほか、清涼飲料、チョコレート、一部の市販薬も同じ一日に入ります。国の食品の委員会は、感じ方の個人差が大きいため、一日にとってよい量は決められていないと書いています。ほうじ茶を何杯にするかは、ほかに飲んだものとの引き算で決まるのです。

体調や経過は人によってちがうので、迷うときは主治医に相談するのがいちばんです。資料で言えるのは、計算の材料までです。飲みものごとのカフェインを一枚に並べた表は、ほうじ茶のカフェインはいつ・誰が気にする?にあります。数字と出典は、このあとに置いておきます。

数字でくわしく

一杯の量
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年では、ほうじ茶の浸出液は100mLあたりカフェイン0.02g(20mg)です。条件は、茶葉15gに90℃の湯650mL、0.5分です。150mLの湯のみ1杯なら約30mgです〔計算値〕。
焙煎と減り方
高知県農業技術センター茶業試験場の試験(2014年のデータ)で、深炒は荒茶より6〜13%減り、浅炒はほとんど減りませんでした。
欧州食品安全機関
2015年の科学的意見書です。妊婦は、習慣的に1日200mg以下なら胎児に健康リスクは生じないとしています。授乳中は1回200mg以下・1日200mg以下で健康リスクは生じない、と内閣府食品安全委員会のファクトシートが紹介しています。
世界保健機関
妊婦健診の指針(2016年)の勧告です。1日300mgを超える高い摂取の妊婦に、流産と低出生体重のリスクを下げるため、摂取を減らすよう勧めています。カフェインの源には、茶、コーヒー、清涼飲料、チョコレート、エナジードリンク、一部の市販薬を挙げています。
抜ける速さ
妊娠中は母親の血液からカフェインが消えるのが著しく遅くなる、という説明は、食品安全委員会のファクトシートが紹介する世界保健機関の勧告によります。
そのほかの機関
英国食品基準庁は2008年に、妊婦の上限を300mgから200mgに改めました。カナダ保健省は、妊婦・授乳婦・妊娠を計画している女性を1日300mg以下としています。どちらも食品安全委員会のファクトシートによります。
国内の手引き
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」です。妊婦のカフェインが胎児に影響する明らかな研究結果は得られていない、としています。そのうえで、可能な限り控えることが複数の国や学会などから勧奨されている、と書いています。
割合の計算
150mLの30mgは、200mgの15%にあたります〔計算値〕。妊娠の初期・後期で目安を分けた公的な値は、ここで挙げた資料にはありません。