海外のカフェのメニューで、ある店は hojicha、となりの店は houjicha と書いています。日本の袋でも、同じお茶が「ほうじ茶」とも「焙じ茶」とも書かれます。一つの飲みものに、いくつもの書き方があるのです。どの書き方も、言葉について何かを書きとめています。

メニューの文字を、指でなぞってみます。

火の名前

袋を開けると、葉は緑ではなく茶色です。ほうじ茶という名前は、焙じるという作り方を指しているのです。

表示の決まりは、ほうじ茶を、煎茶や番茶などを強い火で焙ったものとしています。名前は、どの葉か、木のどの部分かを語っていません。茎茶は茎を、玄米茶は加えた米を名に持ちますが、ほうじ茶が名に持つのは火なのです。

資料で言えるのは、名前が工程を指しているということまでです。お茶の名前の分かれ方は、ほうじ茶とは?茎茶・玄米茶との違いを工程で整理で整理してあります。つぎは、袋の上の文字でしょう。

袋の上の、仮名と漢字

店の棚の二つの袋が、同じお茶を別の文字で書いています。ほうじ茶は、「ほうじ茶」とも「焙じ茶」とも書かれるのです。

表示の決まりは名前を仮名で「ほうじ茶」とし、定義の文では「焙る」という動詞を使っています。茶業の団体のサイトにある給食の献立集と、国の淹れ方の資料は「焙じ茶」と書いています。「焙」の字は常用漢字表になく、「茶」はあります。

並んだ二つの袋が示すのは、どちらの書き方も公に使われているということです。書き方のつぎは、音でしょう。

四つの拍と、のばす音

ゆっくり口にすると、言葉は同じ長さの拍に分かれます。ほうじちゃは、ほ・う・じ・ちゃの四拍で、はじめの「ほう」をのばして読むのです。

仮名の「ほう」は「ほ」と「う」の二文字で、合わせてのばす「オー」の音になります。「じ」は ji、「ちゃ」は cha とつづり、新しい告示が採ったヘボン式に近い書き方です。同じ告示は、なじみのあるつづりの例に matcha を挙げています。

つぎは、ローマ字ののばす音でしょう。

hojicha、hōjicha、houjicha

日本の外のメニューでは、この言葉がいくつかのつづりで書かれています。国のつづり方に沿えば、hōjicha と houjicha はのばす音を示し、hojicha は省いた形なのです。

国は、長く使ってきたローマ字のつづり方を改めました。のばす音は、Tōhoku のように符号で示すのがふつうです。符号を使わないときは、Touhoku のように仮名どおりに母音を並べてもよいとされています。

告示のQ&Aは、のばす音を書かないつづりが、英語の書き方の影響で広がっていると書いています。このお茶に当てはめれば、hōjicha、houjicha、そして見慣れた hojicha になります。数字と出典は、このあとにまとめて置いておきます。

数字でくわしく

定義
日本茶業中央会「緑茶の表示基準」実施細則の表1は、名称を「ほうじ茶」とし、「煎茶や番茶などを強い火で焙って製造したもの」と定めています。同じ表は、玄米茶を煎茶や番茶などに炒った米を加えたもの、茎茶・棒茶を茎や葉柄の多い茶として定めています。
「焙じ茶」の表記
日本茶業中央会のサイトにある「12ヶ月のお茶給食献立集」のいれ方の表は、「焙じ茶」と書いています。農林水産省のサイトにあるPDF「おいしいお茶の入れ方」も同じです。
常用漢字
常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)には「茶」と「煎」があり、「焙」はありません(公式PDFの全文検索で確認、2026年10月27日)。
ローマ字のつづり方
新しいつづり方は令和7年内閣告示第4号で、昭和29年内閣告示第1号に代わるものです。shi、tsu、chi、fu、ji のようなヘボン式に近いつづりを採っています。文化庁のQ&A(令和8年2月)は、長音は Ōno、Yūki のように符号で示すのが一般的だとしています。符号を使わない場合は、Oono、Yuuki のように現代仮名遣いどおりに母音字を並べ、Tōhoku は Touhoku になります。
符号のないつづり
同じQ&Aは、近年、英語の影響とみられる、長音符号を使わない書き方が広がっていると書いています。そうすると、Ōno と Ono、Yūki と Yuki の区別がつかなくなる、とも書いています。
当てはめ
告示は「ほうじ茶」を例に挙げていません。hōjicha と houjicha は、この文章が一般のきまりを仮名の「ほうじちゃ」に当てはめたものです。