お茶は、焙煎でもっとおもしろい。

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同じ茶葉で、味を作り分ける

第3章・公開 3節/全4節

急須、茶葉、はかり、タイマーで淹れ方を確かめるイラスト

同じ茶葉でも、湯温と時間を変えれば味は作り分けられます。その手順をたどります。

01

「90℃・60秒」は、誰がどうやって決めたのか

待ち時間は、茶の量・湯量・湯温とひと組で。二商品の案内から、手元のお茶の淹れ方を考えます。

急須、茶葉、はかり、タイマーで淹れ方を確かめるイラスト

袋にある「25秒」と「30秒」は、5秒だけ違う淹れ方なのでしょうか。茶の量と湯の量まで並べると、別の違いが見えてきます。待ち時間は、レシピの最後の一項目にすぎません。

丸八製茶場と一保堂茶舗の公式の淹れ方を、一杯を用意する順番に読み直します。

25秒の前にある、6gと260mL

丸八製茶場の献上加賀棒茶の茶葉タイプは、茶6gに熱湯260mLを注ぎ、25秒で淹れる案内です。ティーバッグには別の手順があるため、同じ商品名でも形状まで合わせます。

25秒という数字だけを覚えて、茶の量を大きく変えたり、別の量のお湯を使ったりすれば、元の手順とは別の条件になります。再現したいのは待ち時間だけでなく、茶と湯を用意するところからの一組です。

30秒の前には、10gと240mLがある

一保堂茶舗の極上ほうじ茶は、茶10gに100℃の湯240mLを注ぎ、30秒で淹れます。計り始めるのはお湯を注ぎ始めたときです。

献上加賀棒茶の例と比べると、こちらは茶を多く、お湯を少なく使っています。時間差だけを切り取って比べると、この二つの違いが消えてしまいます。茶の種類も違うため、できた味の差を5秒の効果だけで説明することはできません。

湯100mL当たりの茶量に換算すると、前者は約2.3g、後者は約4.2gです。元の分量から計算した比較用の値で、この量で淹れる新しいレシピではありません。わずか5秒の差よりも、茶と湯の割合には大きな差があることが見えてきます。

一般的な目安と、商品ごとの手順の役割

農林水産省は、ほうじ茶などの一般的な目安として90〜100℃、30秒〜1分を紹介しています。こうした幅のある案内と、特定商品の手順は、役割が違います。

一般的な目安は淹れ方を知る入口になります。一方、今まさに手元の商品を淹れるなら、その商品の形状と分量に合う手順が具体的な出発点になります。数字が少し違うだけで、どちらかが間違いだと考える必要はありません。

研究でも、茶の量と時間は別々に調べる

深蒸し煎茶を扱った研究では、茶葉量や浸出時間、煎じる回数が変わると、成分量や味覚センサーの値も変わりました。これは特定の煎茶を調べた結果で、ほうじ茶の最適な秒数を示すものではありません。

ただ、量と時間を別の条件として扱う見方は、レシピを比べるときにも役立ちます。味の強さを測ることと、その味を自分が好きかどうかも、分けて考えられます。

更新 2026年9月21日この節だけのページ

02

焙煎度が違うと、向く湯温と時間が変わる

浅煎りには熱湯、深煎りには約80°Cという二つの実例。茶葉量・湯量・湯温・時間を一組で読むと、焙煎度だけでは決められない淹れ方が見えてきます。

二組の急須と湯のみを並べ、淡い色と濃い色の茶を描いたイラスト。

浅煎りのお茶は低い温度で、深煎りなら熱い湯で。そんな決め方をしたくなりますが、実際の商品案内を見ると、逆の組み合わせもあります。献上加賀棒茶は熱湯で25秒、美濃加茂茶舗の直火深煎りほうじ茶は約80°Cで1分。二つの例を、温度だけ抜き出さずに読んでみます。

献上加賀棒茶は、短い待ち時間の前に量を決める

丸八製茶場の献上加賀棒茶は、一番摘みの茎を浅く焙じたお茶です。リーフを2人分淹れる目安は、茶葉6グラム、大さじ約3杯、湯260ミリリットル。熱湯を使い、浸出時間は25秒と案内されています。 この分量はリーフの案内で、同じ銘柄のティーバッグにはそちらの淹れ方を使います。

25秒という短さだけがレシピではありません。茶葉と湯の量もそろって、案内された一杯になります。いつもの急須いっぱいに湯を注いで時間だけ25秒にしても、この条件を再現したことにはならない点が、読み方の要所です。

直火深煎りは、二つの「1分」を混同しない

美濃加茂茶舗の直火深煎りほうじ茶は、一年間低温貯蔵した茶葉をじっくり深煎りにした商品です。よく沸騰させた湯を約180ミリリットル、湯のみなどの別容器に注ぎ、1分程度待って約80°Cまで湯冷ましをするところから始まります。

その間に小さじ2杯、約5グラムの茶葉を急須に入れ、湯気が穏やかになったら湯を注いで1分待ちます。先の1分は湯を冷ますため、後の1分は茶葉を浸すためです。二つの時計は別々に始まります。湯冷ましの時間は同商品の案内の目安として使い、どんな容器でも必ず同じ温度になるとは扱いません。

浅い・深いだけでは、二つの違いを説明できない

二つの商品は、焙煎度だけでなく原料も違い、茶葉量と湯量も異なります。したがって、この比較から「浅煎りは高温、深煎りは低温」という反対向きのルールを作ることもできません。わかるのは、商品ごとに案内された条件を読む必要があるということです。

ここでの比較は、同じ原料を焙煎度だけ変えて調べた実験ではありません。店がそれぞれのお茶のために示した淹れ方の比較です。特定の商品をおいしく淹れる案内と、焙煎度の効果を切り分ける試験では、目的が違います。

好みに近づけるときは、変えたことを一つ残す

まず商品の案内どおりに淹れて、それを出発点にします。次に変えてみるなら、茶葉量・湯量・湯温・浸出時間のうち何を変えたかを書いておくと、前の一杯との関係を思い出せます。すべてを一度に変えると、好みに近づいても何が役立ったのかがわかりにくくなります。

記録は「おいしい・おいしくない」だけでなく、香り、口に含んだ印象、飲み終えたあとの印象に分けてみます。濃く感じることと好きな味であることを同じにしなければ、ただ茶葉を増やす以外の試し方も考えられます。

更新 2026年9月21日この節だけのページ

03

温度を下げると、何が出て、何が出なくなるか

献上加賀棒茶ティーバッグの水出しは、冷水600mlに2個、3時間。温かく淹れるときとは、分量も時間も変わります。

ティーバッグを入れた水出しポットと、冷たいほうじ茶のイラスト

冷たいほうじ茶には、冷水で時間をかけて出す方法と、熱湯で淹れてから氷で冷やす方法があります。「冷たい」という仕上がりは同じでも、茶が水や湯に触れる過程は違います。

丸八製茶場のティーバッグの水出しと、一保堂茶舗の氷で冷やすレシピを見てみます。待つ一杯と、温かく淹れて冷やす一杯、それぞれの作り方です。

水出しは、冷水600mLで3時間

丸八製茶場の献上加賀棒茶ティーバッグは、2個に冷水600mLを加え、3時間抽出する案内です。1個3gなので、茶は合計6gを使います。

同社は、水出しでは芳ばしさが温かいお茶以上にクリアに感じられると説明しています。これは販売者が伝える、この商品の味わいです。冷たくすることを、温かいお茶の代わりを作るだけでなく、別の香りの印象を楽しむ方法として紹介しています。

同じティーバッグでも、温かい一杯とは配合が違う

この商品の温かい淹れ方は、同じ2個に熱湯260mL、45秒です。水出しでは、同じ茶の量に倍以上の水を合わせ、45秒ではなく3時間かけます。

袋の数だけなら同じでも、量と時間の組み合わせは大きく違います。温かい淹れ方の湯を冷水に替えるだけではなく、水出し用の手順として一組で示されていることが分かります。

熱湯で淹れ、氷の上へ注ぐ冷茶もある

一保堂茶舗のアイスほうじ茶のレシピは、茶葉10gに100℃の熱湯240mLを注ぎ、かき混ぜずに60秒抽出します。十分な氷を用意し、その上に最後までお茶を注いで冷やします。

こちらは冷水で抽出する方法ではありません。熱湯で淹れた後に氷で冷やすので、抽出に使う湯と、冷やすための氷が別々に登場します。溶けた氷も飲み物の水分に加わるため、240mLをそのまま完成量と考えないことも、この作り方を読むポイントです。

「アイス」という名前から、抽出方法まで見る

冷水で待つ方法と、熱湯から氷へ注ぐ方法。アイスほうじ茶という同じ名前でも、使う時間や道具が変わります。前もって仕込むなら水出し、熱湯で淹れて冷やすなら氷を用意する、と作り方から選べます。

紹介した二つは商品も形状も異なる公式レシピです。材料や分量を途中で取り替えず、選んだ方法で作ります。飲み比べる場合も、感じた差を温度だけの効果と決めず、そのレシピで作った一杯として楽しめます。

更新 2026年9月21日この節だけのページ

あと1節を順に公開します。

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