静岡のほうじ茶と聞くと、ひとつの味を思い浮かべたくなります。けれど富士市の説明を読むと、同じ市のなかでも多種多様だと書かれています。産地の名前は、味の約束ではないようです。ここでは市の説明と、その土地の一つのブランドの作り方を、順番に見ていきます。
富士市は「多種多様」と説明している
静岡県富士市は、富士のほうじ茶について「煎茶同様、茶農家や茶商により茶葉の種類や焙煎方法等が異なるため、多種多様なほうじ茶を楽しむことができます」と説明しています。ひとつの味を代表させるのではなく、産地のなかに幅があるという書き方になっています。
つまり、産地が同じでも、どの茶葉を使い、どう焙煎するかはつくり手ごとに違う、ということになります。これは富士市についての記述なので、静岡県全体の共通の製法や味として広げて読むことはできません。読める範囲は、この市の説明にとどめておきます。県の名前でまとめて語ると、こぼれるものが出てきます。
4軒の茶農家がつくる「凛茶」
その富士市には、富士山の麓で育った4軒の茶農家が手を取り合って立ち上げたほうじ茶ブランドがあります。日本茶茶茶は、自社サイトで「凛茶」を、伝統を守りつつ革新を追求して開発したこだわりのほうじ茶として紹介しています。農家が集まって、一つの商品をつくる形です。
同社は、ほうじ茶の香りを最大限に引き出すため、通常の選別作業を何度も繰り返して厳選した茎を使うと説明しています。焙煎には特殊な機械を使い、遠赤外線で茎の芯までじっくり火を通すとしています。原料の選別と火の入れ方が、続けて書かれているところが読みどころです。
均質になるよう少量ずつ時間をかけて焙煎する、とも書かれています。ここから分かるのは、あくまで一つの商品の作り方です。遠赤外線の焙煎が他の方式より優れているとも、静岡のほうじ茶がみなこの作り方だとも、この説明からは言えません。書いてあるのは、この一本の設計だけです。
産地名のあとに、つくり手を見る
富士市の説明と、一つのブランドの説明を並べると、同じ産地のなかに幅があることが見えてきます。棚やメニューで産地名を見つけたら、その次に、だれがどの部位をどう焙じたのかを探してみる。産地名は入り口で、味の違いはその先に書かれています。書かれていないときは、店の人に聞くのが早いです。
