狭山茶の袋に、「狭山火入れ」という言葉が刷られています。熱という字の気配から、香ばしく焙じたお茶を思い浮かべるかもしれません。けれど、火入れは仕上げの工程の名前で、ほうじ茶はお茶の名前なのです。

この文章では、狭山市の工程の説明と、狭山茶農家ささら屋の「茎ほうじ茶 ほのか」を読みます。熱を加える仕事と、材料を選ぶ仕事を分けてたどります。

仕上げの段に置かれる火

急須のふたを取ると、乾いた葉の香りがやわらかく立ちます。狭山火入れは、お茶を仕上げる段階で熱を加える工程なのです。

秋の日ざしが干し柿を乾かして甘くするように、一つの加熱にいくつもの役目があります。市の説明では、十分に乾かして日もちをよくすることが一つです。もう一つは、熱で生まれる香りで、味や香りを高めることなのです。

火を入れると聞いて色を濃くすることだけを思うと、仕上げの仕事の一部を見落とします。資料で言えるのは、乾かし、保ち、香りを立てる工程だというところまでです。つぎは、工程の名前とお茶の名前のちがいでしょう。

工程の名と、お茶の名

湯のみの中の色だけを見ても、どんな工程を通ったかは見えません。火入れをしたかどうかと、ほうじ茶かどうかは、別のことを確かめる問いなのです。

市の説明は、仕上げの中の一つの段として火入れを置いています。狭山火入れをしたお茶が、すべてほうじ茶になるわけではありません。熱を使うという共通点だけで、同じ工程とは言えないのです。

商品の説明に「火入れ」が出てきたら、何のお茶を、どの段で仕上げているかまで読むことになります。資料で言えるのは、前後の作業を見れば工程の位置がわかる、というところまでです。つぎは、茎の名のついた一袋でしょう。

茎の名の袋に、葉もまじる

茎茶の袋を開けると、細い茎のあいだに葉のかけらがまじることがあります。「茎ほうじ茶 ほのか」には、茎だけでなく葉も入っているのです。

ささら屋の説明では、やぶきたとさやまかおりの一番茶から、茎茶と大柄な茶葉を選んで焙じています。この一文には、品種、摘んだ時期、使う部位の三つが入っています。商品名に茎とあっても、原料はそれだけではないのです。

「茎ほうじ茶」の一語で読み終えず、つくり手が何を選び集めたかまで見る、資料で言えるのはそこまでです。工程と商品の出どころは、このあとにまとめて置いておきます。

数字でくわしく

工程の出典
埼玉県狭山市の狭山茶の案内ページによります。
火入れの定義
狭山火入れを、お茶の仕上げ段階で熱を加える工程としています。
一つめの目的
十分に乾燥させて、貯蔵性を高めることです。
二つめの目的
加熱香気を生み出し、味や香りを向上させることです。
ほのかの品種
「茎ほうじ茶 ほのか」は狭山茶農家ささら屋の商品で、品種はやぶきたとさやまかおりです。
ほのかの原料
一番茶から、茎茶と大柄な茶葉を選んで焙じています。商品名には茎とありますが、原料には葉も入っています。